サラ文・展望台(2013年9月)

   

ビッグイシューを知っていますか?
街頭で300円で売られている「ビッグイシュー」という雑誌をご存じですか?駅前などで雑誌を高くかざして売っている人がいますが、普通の服装でも皆ホームレスのかたがたです。300円で売り160円が自分の収入となります。ロンドンで生まれ今では日本でも根付いていますが、決してチャリティではなく仕事を通して自立をしてもらうのです。日本では無料で配られる良質の雑誌類が多いので、有料でしかも街頭でホームレスから買ってもらえるかどうか危ぶまれましたが、それなりに中身は工夫をこらして良質な内容に仕立て、著名人のエッセイや有名評論家なども書いています。
1冊売って160円ですから自立するには非常に困難なことはわかります。一日立ちっぱなしで30冊売ると4800円の収入で、そこからその日の食費と簡易宿泊所などの出費を差し引いて千円を貯めて7〜8か月でアパートを借りる資金を捻出します。決まった住所ができれば、次のステップとして就職活動ができるというわけです。2011年12月の統計では販売員1280人のうち150人が就職口を得たとのことですが、まだ9割近い人たちが苦労をしていることになります。以前私は赤坂見附の駅前でこの雑誌を買って千円札をだしました。売り手はあちこちのポケットをさぐり釣銭を探していたので、寄付をする意味で「お釣りはいいですよ」と言って去ろうとすると彼が追いかけてきて「大丈夫、お釣りはありますよ!」といって小銭をかき集めて700円のお釣りをくれました。悪いことをしたと私は後悔しました。自らの力で今の生活を立てているという誇りと自覚を感じさせました。その後は買うときはぴったり300円出すか、あるいは500円玉を出して200円のお釣りをもらうようにしています。   


                                                                                                                                                       落合正子