サラ文・展望台(2016年2月)

節分の豆まきと鬼

 季節の変わり目には鬼が集まり、疫病や災いをもたらすと考えられていた。そのため、節分に豆をまいてそれらを追い払うようになった。「鬼は外、福は内」といいながら大豆をまくのである。しかし、調べてみると、この掛け声が全国共通というわけではなかった。

たとえば、鬼が奉納されているという埼玉県嵐山町の鬼鎮神社では、「鬼は内」と唱えるという。また、奈良市のでは、悪者を退治する鬼が寺にいると言い伝えられているため、「福は内、鬼は内」と唱えているそうだ。「恐れ入谷の鬼子母神」で有名な台東区の真源寺では、鬼を祭っているので「鬼は外」は禁句になっているというし、成田山新勝寺では、ご本尊の不動明王の前では鬼も改心するとされるため、「福は内」のみが認められているという。姓に「鬼」の字がある人などは「鬼は外」とはいえない。個人的に「福は内、鬼も内」という人もいるようである。

 豆まきは日本に限らず、古代ローマ人も行っていた。レムリア祭(Lemuria)といい、毎年5月の真夜中に悪霊を追い払うのであるが、その際に黒豆を投げる習慣があったという。日本とは異なり、豆を背後に投げながら、「悪霊よ出て行け」と唱えるものであった。

いったい、日本でもローマでもなぜ「豆」なのだろうか。

日本では目つぶしとして鬼の目(=)を打て、ということで豆が使われたという説がある。また、豆はマメに暮らす(=健康)など、福豆のイメージもあった。

ローマにおいても何らかの由来があったのであろう。ローマ人が豆を背後へ投げた理由は、恐ろしい悪霊と目を合わさないようにするためだったそうだ。

異文化でありながら、ともに鬼や悪霊を豆でやっつけるという共通の発想がおもしろい。ただ、日本には人々に歓迎されるいい鬼もいた。その点がローマと違う。

みなさん、豆まきしていますか?

斎藤明雄