サラ文・展望台(2016年6月)

趣味と断捨離

凧の趣味を始めてからもう40年近くになる。
自宅には、昔作った大きな凧、凧の大会で賞をもらった記念の凧、人からもらった懐かしい凧など、その数200枚を超え、納戸に、押し入れに、物置に溢れかえっている。家人からは、「少し凧を捨てて」「どうにか整理して」と催促される。始めは整理して、少し捨てたり、束にまとめたりしたが、それでも一向に減らない。弱ったなあ。そうだ、この際思い切って凧の「断捨離」をしよう!
まず、古いものからまとめて廃棄することにした。良い凧については人にプレゼントしたり。でも半年経っても一向に減らない。その一方で翌月「凧の大会」の案内が来ると新たに凧を作ってしまう。大会ではテーマが決まっていることが多い。前回の大会ではテーマが「蛸の凧」。「そんな凧があったかなあ。また作らなきゃなあ」と新たに作る。趣味の世界はそう簡単に断捨離に至らない。しかし自分も年をとってきたし、そろそろ真面目に断捨離を考えなきゃあなー。でも結局断捨離のための良いアイデアが少しも思い浮かばず、何も進まずに時間だけが過ぎてゆく。サラ文の仲間も同じように趣味の品々の断捨離で悩んでいる人が結構居るんだろうな。どうしているか聞いてみようかな。聞いても無駄かな。
結局断捨離の解は得られずに時間ばかり過ぎてゆく。しようがないから、この気持ちだけでも残しておこう。どこの残そうかそうだ、「断捨離」を記した連凧を作って空に揚げよう。こうして、「断」「捨」「離」と一字ずつ記した3枚の連凧が作られて、空に揚がった。この連凧を広場で揚げていると親子連れがやって来て、その子供がお母さんに「何て書いてあるの」と尋ねている。
お母さんは答えずにこちらを見た。
「整理をしようねっていう意味だよ」と自分は答えたが、「よく判りません」という顔をして親子は去っていった。


山谷 暁