サラ文・展望台(2007年9月)

ずっと昔、ブルーコメッツというグループサウンズがあり、井上忠夫というボーカルは人気絶頂で、「ガールフレンドは?」とのインタビューに「無数」とにこやかに答えていました。才能もあり、この人は本当に幸福な人生を歩むのだなぁと思って見ていました。グループ解散後も作曲で多くのヒットを出し、順風満帆と思っていた矢先、テレビで聞いたニュースは彼が自殺したとのこと。ほどなく追い討ちをかけるように妻も自殺したとのニュースを聞きました。

ずっと昔、アパートに住んでたころ、きれいなおねえさんがいて、いつも明るくにこやかで美しく着飾ってるが、きさくで教養もありボーイフレンドもたくさんいて、深夜も高価なお寿司などをおみやげにもって帰り、私は余った分を食べさせてもらいながら、この人はいいなぁ華やかで楽しい人生でと思ってましたが、ある日突然失踪しました。借金が相当あったとのこと。その頃の水商売は、他店へ引き抜かれるとき支度金以外にもバンス(たぶんアドバンスの略だと思う)という前渡し金をたくさんもらい、つまりは給料の前払いですが、自分の客を引き連れて新しい店に移り、そこで稼いでバンスを返済する、そのうちまた引き抜かれ再び以前より多額のバンスをもらい、未返済のバンスがあれば一度に支払って次の新しい店へ行くという繰り返しが売れっ子ホステスの上昇スパイラルだったそうです。この倍々ゲームはそれがずっと回転してくれればよいが、どこかでつまづくと借金だけが残るという構図。バンスは前借金でも手元にあれば着物や宝飾品など自分の営業投資に使うだろうし(そのためのバンスなのだ)、使っても成果を上げてまた移籍すればもっと多くのバンスがはいるという玉ころがしは、これに入れることが一流ホステスの証で、バブルに踊ってる間は普通のことだったようです。

ずっと昔、近くの古びた家に質素でつましい老夫婦が住んでいて、私がキャベツの芯など固いので捨ててしまうと言ったら、おばあさんがそれはもったいないで すよと言い、おいしくぬかずけにした芯をくれました。おじいさんは何でも自分で作って、捨ててあったブリキでチリトリを、不要の板切れできれいな状差しを 作ってくれました。そのご夫婦が土地持ちのすごい億万長者と知るのはずっとあとになってのことです。 肉眼では真実は見えないのです。

副代表幹事 落合 正子

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